プロンプトエンジニアリングとは?基本・応用手法や例、コツを解説!

AI(人工知能)が生成する出力物の質は、どのような「プロンプト」を入力するかによって大きく変わります。
そこで注目されているのが「プロンプトエンジニアリング」です。
プロンプトエンジニアリングは、単に生成AIへの指示文を作成する作業ではありません。誰もが、いつでも理想に近い生成物を得るための「型」を作る戦略的アプローチです。
本記事では、プロンプトエンジニアリングの基本的な考え方から基本・応用手法、具体的なプロンプト例を解説します。また、プロンプトエンジニアリングのコツや注意点など、プロンプトの精度と安全性を高めるための方法も紹介します。
基礎的なプロンプトからテクニカルなプロンプトまでさまざまな型を知り、生成AIをより効果的に活用したい方にとって役立つ内容となっています。
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【目次】 |
1. プロンプトエンジニアリングとは?

プロンプトエンジニアリングは、生成AIに対して的確かつ効果的なプロンプトを設計・実行する技術や手法です。
生成AIの出力精度や生成される情報の質は、与えられるプロンプトの質に大きく依存します。プロンプトの精度が低ければ、生成AIの持つ生成能力を引き出せず、あいまいで低品質な出力しか得られません。
そのため、生成AI活用において、適切なプロンプトの設計は極めて重要な要素と言えます。
生成AIでのプロンプトエンジニアリングの重要性
近年、生成AI技術が著しく進化する中で、プロンプトエンジニアリングの重要性が大きく高まっています。プロンプトエンジニアリングの主な役割は、以下のとおりです。
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特に、外部データベースを検索するRAG(検索拡張生成)やWeb検索を使用する生成AIシステムにおいては、膨大な関連情報を正確に検索し、適切に解釈し、一貫性のある出力をするためにプロンプトエンジニアリングが重要な役割を持ちます
プロンプトの基本的な構成要素
プロンプトの基本的な構成要素は以下4つです。
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上記を踏まえると、基本となるプロンプトは以下のようになります。生成AIにレシピを提案してもらう例で見てみましょう。
【プロンプト例】 あなたは、プロの和食料理人です。→背景や文脈 今我が家の冷蔵庫には鶏肉、玉ねぎ、卵があります。→入力データ 10代から40代の家族4人が満足できるレシピを提案してください。→指示 レシピはステップ形式で、小学生でも理解できるレベルでお願いします(出力フォーマット)。 |
特に「入力データ」に関しては、タスクの核となる情報が集約されるため、最も重要なポイントです。具体的かつ正確なデータを提供することで、AIはより高精度な出力を実現でき、結果としてプロンプト全体の効果が大幅に向上します。
上記例の入力データをもっと具体的にするなら、単に「鶏肉」ではなく、「鶏むね肉1㎏」に替えると、より使えるレシピが出力されるでしょう。
上記の要素を基本とし、後述する手法を組み合わせることで、より高度で精度の高いプロンプトが設計でき、より高精度な出力を得られます。
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2. プロンプトエンジニアリングの基本:Zero-shot promptingとFew-shot prompting

まずは、基本的なプロンプトエンジニアリングの手法として「Zero-shot prompting」と「Few-shot prompting」を紹介します。
Zero-shot prompting
Zero-shot promptingとは、質問のみの最もシンプルなプロンプトです。
【プロンプト例】 以下の文章の感情を「肯定・中立・否定」のいずれかに分類してください。 文章:何もやる気が出ない 感情: |
普遍的な事柄や一般常識を問う質問であればZero-shot promptingでも有効です。しかし、学習データにない最新情報や思考力を問う問題では正しい回答を得られない場合が大半です。
Few-shot prompting
Few-shot promptingとは、Zero-shot promptingから一歩進んで、簡単な模範例を提示することでタスクを遂行する手法です。
【プロンプト例】 文章:何もやりたくない 感情:否定 上記例に基づいて、以下の文章の感情を「肯定・中立・否定」のいずれかに分類してください。 文章:何もやる気が出ない 感情: |
Zero-shot promptingに比べると、より精度の高い出力を期待できます。しかし、やはりもっと複雑で多条件のタスクとなると十分ではありません。そこで、もっと高度なプロンプトエンジニアリングが必要となってきます。
3. プロンプトエンジニアリングで押さえておきたい3つのコツ

Zero-shot promptingやFew-shot promptingをさらに高度にしたプロンプトエンジニアリングで押さえたいコツは、以下3つです。
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ここでは、それぞれを詳しく紹介します。
制約条件を付け加える
具体的な制約条件をプロンプトに含めることは、求める回答の質を高める上で有効です。
例えば、回答のボリュームや使用する専門用語の指定、使用禁止ワードの設定などさまざまな制約条件を設定することで、意図しない回答や曖昧な表現を防止できます。
すべきことを書く「絶対条件」と絶対に避けるべき「制約条件」を組み合わせることで、より効果的に出力を絞り込めます。
前述のレシピ例に制約条件を付け加えた例が以下です。
【プロンプト例】 あなたは、プロの和食料理人です。 今我が家の冷蔵庫には鶏肉、玉ねぎ、卵があります。 10代から40代の家族4人が満足できるレシピを提案してください。 丼物は避けてください →制約条件 レシピはステップ形式で、小学生でも理解できるレベルでお願いします(出力フォーマット)。 |
段階に分けて質問する
一度に全体の答えを求めるのではなく、段階的に質問を分割するアプローチは、複雑な課題や多角的な視点が必要な問題に対して効果的です。
例えば、最初に全体の概要を求め、その後に各セクションごとに深掘りする質問を行うことで、回答に抜けや漏れが生じにくくなります。また、段階ごとの回答を総合するプロセスで、全体としての一貫性や論理性が保たれるため、最終的なアウトプットの質が向上します。
前述のレシピ例で説明すると、いきなりレシピを出力させるのではなく、まずは入力データや制約条件に沿った料理をリストアップしてもらいます。次に、そのリストのなかから好みの料理を選択してレシピを出力してもらう手法です。
試行錯誤を繰り返す
特に、生成AI導入時の初期に起こりやすい問題が、期待する回答から的外れな出力しか得られないことです。プロンプトが原因で回答の質が上がらないのに、生成AIモデルのせいにして生成AIの活用をあきらめてしまう方も珍しくありません。
しかし、最初に入力したプロンプトが必ずしも最適な結果を生むとは限らないため、より理想の回答を得るためには、生成AIの出力をもとに試行錯誤を繰り返しながらプロンプトを調整する必要があります。
実際にAIの応答を見ながら、プロンプトのどの部分を改善すべきかを検証し、段階的に最適化していくとよいでしょう。
4. プロンプトエンジニアリングの応用的手法8選

ここでは、応用レベルのプロンプトエンジニアリングの手法と、そのプロンプトの例を紹介します。応用レベルのプロンプトを活用することで、より高度なタスクに対応することが可能となります。
Directional Stimulus(回答の方向性を指示する)
Directional Stimulusとは、日本語で「方向性刺激プロンプティング」とも呼ばれ、回答の方向性を明示する手法です。ある程度欲しい情報やコンテンツが決まっている場合は、出力の方向性をコントロールすることで、希望に近い出力を得られます。
Directional Stimulusは、特に要約で有効な手法です。
【プロンプト例】 以下のテキストアノテーションの記事を要約してください。 ポイント:おすすめ代行サービス、およびその理由 XXX(記事) |
Generate Knowledge Prompting(知識生成を促す)
Generate Knowledge Promptingとは、回答に関係性の高い情報をプロンプトで与える手法です。より厳密な回答を得たい場合や特定の情報を分析したい場合に有効です。
また、生成AIは学習時点まで情報にしか対応しておらず、最新情報に基づいた回答はできない場合があります。そのような問題に対し、最新の知識や情報を入力して回答してもらうことも可能です。
【プロンプト例】 以下の統計データに基づいて、日本における高齢化社会の現状とその影響について分析してください。 ・総務省の最新人口統計データ ・高齢者人口の増加率と労働力人口の減少率 ・地域別の高齢化率これらの情報をもとに、今後の社会保障制度の課題と対策について考察してください |
Chain-of-Thought (思考の推移を提示)
Chain-of-Thoughtとは、ステップごとの思考の連鎖を例を通じて与える手法です。時折、生成AIは飛躍的に回答する傾向があるため、それを阻止する目的があります。
特に、簡単な数学問題で有効です。
【プロンプト例】 問題:複数の数で構成されたグループのなかの奇数だけを足し合わせて、偶数になるか奇数になるか、以下ステップに沿って判定して ステップ1:グループ内の奇数を抽出 ステップ2:抽出した奇数の個数を数えて ステップ3:個数が偶数なら「偶数になる」、奇数なら「奇数になる」と出力 では、次のグループで実行して: 2, 5, 8, 11, 14, 17, 20 |
Self-Consistency(自己一貫性)
Self-Consistencyでは、複雑な質問や課題を与えたときに、単に1回の回答で済ませるのではなく、同じ問題について複数回回答させます。そして、各回答を比較し、最も一貫性のある答えや、複数の回答から得られる共通点を選ぶ方法です。
一つの回答に存在する偶然の誤りや偏りを減らし、より信頼性が高い結果を得ることができます。
【プロンプト例】 あなたはプロジェクトマネージャーです。以下の特徴を持つ新しいスマートウォッチの価格を決定します。 バッテリー寿命:1週間 健康モニタリング機能(心拍数、睡眠トラッキング、ストレス測定) 高級感のあるデザイン(チタン製ボディ) ターゲット層:ビジネスマンや健康意識の高い30〜50代のユーザー 競合製品の価格帯は20,000円〜50,000円です。 ただし、あなたはこの課題に3回独立して回答を出し、それぞれの回答で導き出した価格設定を根拠とともに示してください。最終的には、3つの回答の中で最も論理的かつ一貫性があり、信頼性の高いものを選び、推薦してください。 |
Zero-shot CoT (例示なしでChain-of-Thoughtを促す)
Zero-shot CoTとは、既存のプロンプトに「ステップバイステップ」を加える手法です。Zero-shot CoTではたった一言付け加えるだけで、Chain-of-Thoughtのように段階的に推論が進み、回答例が必要なCoT Promptingよりも簡単に問題解決にたどり着けます。
例示が思いつかない場合でも生成AIが考えてくれるため、難易度の高い数学問題や論理的な思考が問われる問題まで幅広く活用できます。
【プロンプト例】 問題:最初にリンゴが12個ありました。後から7個のリンゴが加わり、4個が取り除かれました。その後、腐ったリンゴが2個見つかったので、新しいリンゴ2個と入れ替えました。合計でリンゴは何個になりましたか? ステップバイステップで考えてください。 |
ReAct(推論と行動例を導き出す)
ReActとは、推論(Reasoning)と行動(Action)の両方を実行し、タスクを解決する手法です。以下の手順で実行されます。
- プロンプトの問いかけに関する推論を実行
- 推論した内容を達成するための具体的なアクションを提示
推論と行動、得られた情報に基づいた推論、行動を繰り返すことで、複雑な意思決定タスクなどより高度なタスクを遂行できます。
【プロンプト例】 テキストアノテーションの自動化方法を以下のフレームワークに沿って教えてください。 #フレームワーク Thought: [問題に関する推論] Action: [実行すべき具体的なアクション] Observation: [アクションの結果得られた観察] Thought: [新しい情報に基づく次の推論] Action: [次のアクション] |
Tree of Thoughtsプロンプティング(階層的に思考させる)
Tree of Thoughts(ToT)プロンプティングとは、複数のアイデアを出力させ、正解に近いものを残し、残ったアイデアを派生させていく手法です。
ToTプロンプティングでは、複雑な問題を管理可能なステップに分割し、情報に階層を持たせます。そうすることで、思考の中間段階を自己評価させ、より創造的で深いアウトプットを目指します。
【プロンプト例】 以下の問題について、3つの異なる思考経路を探索してください。各経路で以下のステップを踏んでください: 1. 初期アイデアの生成(3つの異なるアプローチ) 2. 各アイデアの評価(長所と短所) 3. 最も有望なアイデアの選択と発展 4. 新たな課題や疑問点の特定 5. 必要に応じてステップ1に戻り、新たな思考経路を探索 最終的に、最も効果的な解決策を提示し、その選択理由を説明してください。 問題:[ここに具体的な問題や質問を挿入] |
マルチモーダルCoTプロンプティング(テキストと画像情報を組み込む)
マルチモーダルCoTプロンプティングとは、従来のテキストでの質問に加え、画像を情報として与える手法を指します。マルチモーダル生成AIに特化したプロンプトであるため、ChatGPTやGeminiの出力を改善する際に有効です。
画像情報を入力することから、視覚的情報を加味した回答が得られることです。テキスト情報で質問する際は条件を詳細に書く必要があります。一方、マルチモーダルCoTプロンプティングによって、視覚情報が加わり、短いテキストプロンプトでも的確に答えを導けます。
もし画像に限らず、大量の外部情報を参照させたい場合はRAGの検討も必要です。RAGであれば、膨大なデータベースの中にある画像・テキスト・音声から情報を取得し、より網羅的かつ正確な回答ができます。
5. まとめ
プロンプトエンジニアリングは、AIの出力の質を左右する極めて重要な技術です。
具体的な例示や段階的な質問、画像情報の付与など、さまざまな手法やテクニックを組み合わせることで、より精度の高い回答や提案を得られます。
また、前提として質の高い入力データを用意することも重要です。質の高い入力データは、必要な背景情報や前提条件を十分に含むため、プロンプトを通じて濃厚な文脈を与えることができ、出力の質が向上するためです。
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