NLU(自然言語理解)とNLG(自然言語生成)は、近年注目されているLLMの言語・背景理解力を向上させる上で重要な役割を担っている技術です。それぞれをLLMへ活用することで、従来の単純なキーワード認識から一歩進んだ複雑な文脈や意図の解析が可能となっています。
NLUやNLGに対して、「具体的な役割の違いは何か」「ビジネスでどう活用できるのか」といった疑問をお持ちの方もいるでしょう。
本記事では、NLUとNLGそれぞれの用語の定義や意義について分かりやすく紹介します。また、それぞれの応用分野を解説しますので、NLUとNLGの基本情報を包括的に理解いただける内容となっています。
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【目次】 |
NLU(Natural Language Understanding:自然言語理解)とは、コンピュータが人間の言葉の文脈や意図を解析するための技術です。テキストや音声などのデータを、単なる文字列以上の意味ある情報として理解し、そのデータが持つ感情(ポジティブ/ネガティブなど)、そして発話者の意図(質問、依頼、命令など)を読み取ります。
NLUは、自然言語処理(NLP)の重要なサブ分野として位置付けられており、テキストの背後にある意味や意図を的確に捉えることを目指しています。
従来のNLUは、キーワードマッチングによるルールベース手法や、Hidden Markov Model(HMM)などの確率モデルを用いて解析を行っていました。これらの手法は、入力されたテキストの中からキーワードを探し出し、そのキーワードに基づいて解析を行うもので、文脈や意図の理解には限界がありました。
そのため、近年はRecurrent Neural Networks(RNN)やLong Short-Term Memory(LSTM)などのディープラーニング(深層学習)モデルが活用されつつあります。ディープラーニングモデルを利用することで、文脈を考慮した言語理解が可能となり、テキストの意味や意図をより精度高く把握できるようになりました。
特に、BERTやGPTなどTransformerアーキテクチャに基づく事前学習済みモデルを活用すると、文脈の理解や細かなニュアンスの捉え方が大幅に向上します。これらのモデルはテキスト内の重要な語句や文脈の影響度を学習し、より精度高く意図を解釈できるためです。
ディープラーニングモデルの発展に伴い、NLUを通じてAIは人間の言葉をより深く理解することが可能となり、意味を抽出する能力が向上しています。
NLUの主な意義は、入力された自然言語から本質的な意味や意図を抽出することです。NLUにより、AIは人間の言葉を理解し、より高精度で効果的に対応することが可能になります。
他には以下のような役割もあります。
文脈理解と状況把握:曖昧な表現や多義語の適切な解釈など文脈や背景情報を踏まえて、AIがより高度に理解
自然な対話の実現:抽出された意味や意図をもとに、適切な応答や行動を決定することでユーザーとの自然な会話をサポート
非構造化データの活用:音声や動画などの非構造化データから有用な情報を抽出し、データ分析に貢献
NLUは、現代のAIシステムにおいて、より自然で効率的な対話やデータ処理のための基盤として注目されています。
以下の例では、AIチャットボットが「明日の天気はどう?」という質問を受けた際、NLUが実行されるフローを紹介します。
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NLUの実行フロー |
詳細 |
具体例 |
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テキスト認識 |
受け取ったテキストや音声をテキストで認識する |
ユーザーの「明日の天気はどう?」という文章を認識する |
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意図認識 |
ユーザーが入力した文の背後にある目的や要求を判断 |
「天気を知りたい」という質問の意図を認識 |
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前処理とトークン化 |
文章を単語やフレーズに分割(形態素解析)し、不要な記号やストップワードを取り除く |
「明日/の/天気/は/どう/?」のように分解し、「の」「は」を取り除く |
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文法解析・構文解析 |
文の構造を把握し、各単語間の関係や文法的な役割を解析 |
「明日」の部分は時間、「天気」は求められている情報を示す名詞として解析 |
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固有表現(エンティティ)の抽出 |
名前、日付、場所などの重要な情報(エンティティ)を特定 |
「明日」は日付のエンティティ、「天気」は尋ねられている情報のエンティティとして特定 |
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発話分析・文脈理解 |
文脈を理解し、アクション事項を特定 |
ユーザーの現在地の明日の天候、気温情報の取得が必要であると決定する |
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アクション実行 |
システムが構造化されたアクションを実行 |
「天気予報を調べる」というアクションを実行し、音声認識やテキストで知らせる |
上記のNLUの処理により、AIは「何が言われたのか」「どのような応答が適切か」を理解し、内部で構造化された表現に変換することで、適切な応答や処理を実行できます。また、日本語は同じ単語や表現が文脈によって異なる意味を持つため、NLUではより適切な解釈が必要です。
日本語の解釈に関する問題を解決するためには、高品質なデータアノテーションを付与したLLM(大規模言語モデル)の活用がおすすめです。
NLG(Natural Language Generation:自然言語生成)とは、AIシステムが人間にとって理解しやすい自然言語の文章を生成する技術です。入力されたデータ(数値データ、構造化データ、記号など)を、人間が読んだり聞いたりして自然に感じる文章や音声に変換します。
従来のNLGでは事前に決められたテンプレートに従って、データを埋め込んで文章を生成していました。
近年は、GPTシリーズなどの高度なLLMを利用し、入力されたデータに基づいて柔軟に文章を生成する方法が主流になりつつあります。LLMを活用することで、従来よりも文脈に応じた自然な言語表現が可能です。
NLGでは、主に以下のディープラーニングモデルが使用されます。
RNN:時系列データや逐次的な情報に基づいて文章を生成するための技術
LSTM:RNNの発展モデルで、長期的な依存関係を持つデータの処理が得意なネットワーク
Transformer:高速な処理が可能で、特に文脈理解や大規模なデータを処理する際に優れた性能を発揮するアーキテクチャ
ディープラーニングモデルを活用することで、AIは膨大なデータから意味のある文章を生成し、AIと人間間のよりスムーズなコミュニケーションを促進します。
関連記事:LLMとは?仕組みや種類、メリット・導入手順・活用事例を解説!
NLGは、以下のような役割を持ちます。
データの解釈と変換
コミュニケーションの自動化
NLGは、大量のデータや統計情報などを入力として受け取り、その情報から重要なポイントを抽出し、読みやすい文章として出力します。
複雑なデータセットや数値情報をレポートやメール、Webコンテンツなどさまざまな形式で提供できるため、データの解釈や伝達が大幅に効率化されます。そのため、従来よりも情報の整理や解説にかかる時間と手間を削減できます。
また、銀行の口座情報や市場レポートなどの日常的な情報提供の自動化も可能です。人間が手作業で文章を作成する必要がなくなり、情報提供が迅速かつ効率的に行われます。
NLGは、データの意味を明確に伝え、ユーザーに理解しやすい形で情報を提供するため、幅広いビジネスシーンにおいて重要な役割を担います。
NLGで文章を生成する仕組み
NLGは、一般的に以下のステップで文章生成を行います。
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NLGの実行フロー |
詳細 |
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データ収集と入力解析 |
与えられたデータを解析し、どの情報が文章化に適しているか、または伝えるべき重要なメッセージは何かを特定 |
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内容計画(コンテンツプランニング) |
収集された情報をもとに、情報を提示する順序や文章のトーンなど、文章全体の構成や論理的な流れを設計 |
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文章生成 |
計画に基づいて、実際に言葉を選び、文法的に正しい文章として形にする段階 |
NLGが自然言語として違和感のない、読みやすく正確な文章を生成するためには、正確で整った高品質なデータが不可欠です。具体的には、十分な教師データやアノテーション(ラベル付け)など、データの前処理が適切に行われていることが重要です。
データの量や質、多様性が不十分であると、生成された文章の品質や信頼性が低くなります。
NLUとNLGは、NLPの一部として相互関係にあります。以下が、それぞれの違いです。
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比較項目 |
NLU |
NLG |
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目的 |
機械が人間の言葉を正しく解釈できるように、文法や文脈を使って言葉の取捨選択や解釈を実行 |
与えられたデータに基づいて、人が理解しやすいように文章を生成 |
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入力 |
自然言語(文章、発話など) |
構造化データ(数値、DB) 非構造化データ NLUの出力(意図、情報)など |
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出力 |
構造化された情報(意図、エンティティ、感情、関係性など) |
自然言語(文章、発話など) |
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処理の方向 |
言葉 → 意味・構造 |
意味・データ → 言葉 |
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主な技術 |
形態素解析 構文解析 意味解析 意図推定 固有表現抽出 |
内容決定 文章構成 文生成 表層実現 |
つまり、NLUは入力された言語情報の「解釈」に重点を置き、NLGはアウトプットとしての「生成」に焦点を当てる点が大きな違いです。
一方、NLUとNLGは密接に関連し、連携して機能することが多くあります。特に、人間とAIが対話を行うシステム(チャットボット、スマートスピーカーなど)において、両者は不可欠な要素です。
このように、NLUとNLGは補完的な関係にあり、NLUが入力された言語を解釈し、NLGはNLUの解釈内容に基づいて適切な言語を生成し、生成能力の向上を目指します。
NLUとNLGはそれぞれ、多様なNLP分野で活用されています。ここでは、それぞれの応用分野を紹介します。
NLUによって、大量のレビューやSNS投稿、アンケートデータなどからユーザーの感情や意図を抽出でき、マーケティング戦略や顧客サービスの改善に役立てられます。NLUにより顧客の感情を理解することで、企業は顧客に寄り添った対応が可能となり、顧客満足度の向上につながります。
NLUは大量のユーザーの意図を理解し、より関連性の高い検索結果を表示するために使用されます。ユーザーが求めている情報を正確に理解することで、検索精度が向上し、ユーザー体験が改善されます。
NLGは、商品のスペック情報や機能特徴などをもとに魅力的な商品説明文を自動生成できます。NLGにより大量の商品情報を効率的に処理し、顧客に魅力的で分かりやすい情報を提供できます。
AI チャットボット・バーチャルアシスタントにおいて、NLUはユーザーの話し言葉や書き言葉から、質問の意図、要求内容、さらには感情のニュアンスまでを高精度で理解します。曖昧な表現や文脈にも対応可能です。
一方、NLGは質問応答システムにおいて、理解した内容に基づいて自然な回答文を生成します。ユーザーが求めている情報に対し、適切で自然な言語で応答を行うことで、より円滑な対話が実現します。
よくある質問や定型的な手続き・案内をAI チャットボット・バーチャルアシスタントが完全に自動対応することで、オペレーターはより複雑で個別性の高い問い合わせに集中できます。これにより、サポート部門全体の人件費、採用・教育コストの削減に貢献します。
NLUをデータ分析レポートに活用することで、膨大な情報を効率的に整理し、分析や議論、意思決定に必要な情報を簡単に抽出できます。
顧客レビュー、SNS投稿、アンケートの自由記述、日報、メールなど、社内外に存在する膨大な「テキストデータ(非構造化データ)」から重要なキーワード、トピック、意見、感情(ポジネガ)などを自動で抽出・分類・要約します。
一方、NLGはNLUによるテキスト分析結果や、売上データなどの構造化データと組み合わせて、要点がまとまった分かりやすいレポートやサマリー記事を自動生成します。
膨大な情報の中から、意思決定に必要な根拠や注目すべき点が整理されたレポートが自動で得られるため、勘や経験だけに頼らないデータドリブンな判断を迅速に行えるようになります。
NLUとは人間の言葉の文脈や意味を解析する技術、一方のNLGは意味や情報をもとに人間らしい文章を生成する技術です。両者は、AIと人間との自然なコミュニケーションを促進する上で重要な役割を果たします。
しかし、誤認識や誤解釈に伴うコミュニケーションエラーや、訓練データのバイアス・ノイズに伴う精度低下などビジネスへの活用には多くの注意点、リスクが存在します。
NLUとNLGが抱えるリスクを抑えるためには、高品質なアノテーションが重要です。高品質なアノテーションを行うことができれば、NLUとNLGが与えられるデータから正確に意味を理解し、適切に解釈・生成することが可能となります。