生成AIを効果的に活用するためには、「プロンプト」の書き方が非常に重要です。プロンプトとは生成AIに対する指示文のことで、適切なプロンプトを作成することで高品質な文章・画像・プログラムコードなどを出力できます。
本記事では、生成AIのプロンプトの基本的な概要から上手に書くためのコツや、ビジネスシーンでの活用例などをわかりやすく解説します。また、プロンプト入力時の注意点を踏まえ、ビジネスで安全に活用できるプロンプト作成のヒントを紹介します。
生成AIを最大限活用し、業務やコンテンツ制作を効率化したい方にとって役立つ内容となっています。
プロンプトとは、生成AIに対して与える入力指示や情報のことです。簡単なプロンプトでは例えば、「以下のレポートを要約して」「会議中のビジネスパーソンの画像を作って」といったプロンプトが挙げられます。
近年、OpenAIのChatGPTをはじめとする生成AIは、搭載しているAIモデルが更新されるたびに自然言語の理解能力が大幅に向上しています。そのため、近年の生成AIは、人間同士が行う会話のようなプロンプトでも、ユーザーの意図やニュアンスを柔軟に反映した高品質な文章や画像を生成できるようになっています。
同時に、生成できるものの幅も格段に広がっており、プロンプトの精度次第で生成コンテンツの正確性や独自性、創造性が大きく変わります。つまり、どのようなプロンプトを設定するかが、生成される出力結果の質を決定するのです。
このような背景から、生成AIの発展と共に、プロンプトの質を高めるための技術やノウハウの重要性が増しています。
プロンプトは、生成AIに具体的なタスクや出力内容を指示するための「設計図」として機能します。生成AIはプロンプトを通じて、ユーザーの意図を正確に読み取り、保持している膨大なデータの内容を柔軟に組み合わせて文章や画像、動画としてアウトプットするのです。
生成AIとプロンプト設計の関係性を例えるなら、LLM(大規模言語モデル)は古今東西のあらゆる食材が入った食料庫のようなものです。そのなかから取り出す食材の組み合わせ、品質、順番、解凍方法、調理方法、盛り付けで全く異なるレベルの料理が出来上がります。
そして、プロンプトは食材の組み合わせから盛り付けまでのすべてを指示するレシピのような存在です。
つまり、プロンプトは単に命令を伝えるだけにとどまらず、生成AIが持つ豊富な知識や学習済みデータから、必要な情報を「取り出す」ための重要な要素と考えられます。
プロンプトをうまく設計し活用することで、生成AIはさまざまなものを出力できます。
以下が、具体的な出力内容の例です。
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つまり、生成AIにおけるアウトプットの正確性や独自性、わかりやすさは、プロンプトの設計(プロンプトエンジニアリング)次第で大きく変わり得るのです。
プロンプトは以下の手順に沿って作成することで、より質の高いものになります。
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上記の手順を踏むことで、生成AIから期待する結果を的確に引き出せるプロンプトを作成できます。
効果的なプロンプト作成のためには、ただ指示を与えるのではなく、いくつか工夫が必要です。以下が、生成AIのプロンプトをうまく書くためのコツです。
生成AIは、プロンプトの内容から全体の背景や文脈を読み取ります。そのため、生成AIがプロンプトを通じて正確な回答を出すためには、背景情報や具体的なデータ(=コンテキスト)をプロンプト内に含めることが重要です。
特に、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を搭載した生成AIシステムでは、外部知識ソースからの情報検索と組み合わせることで、より正確で最新の情報に基づいた回答が可能になります。
生成AIの生成能力を高められるコンテキストの例は以下です。
コンテキストの種類 | 例 |
生成AIの役割 | あなたはプロのWebマーケターです。RAGシステムを使用して、最新の業界データや成功事例を参照できます。 |
背景情報 | 当社は従業員50人の中小企業でB2B向けのソフトウェア開発を行っています。オンラインでの顧客獲得に課題を抱えています。 |
期待される出力 | 各提案には実施手順と期待される効果を含めてください |
上記のような詳細なコンテキストを与えることで、AIはプロンプトの内容をより深く理解でき、より精度の高い回答を生成できます。
生成AIモデルがいくら高度な自然言語理解力を有していても、人間に指示を出す感覚と同じように抽象的な指示では情報が限られるため、曖昧な回答しか返せません。
そのため、プロンプトを作成する際は、抽象的な指示ではなく、具体的で明確な指示を記載することがポイントです。
【具体的でない例】 |
【具体的な例①】 |
【具体的な例②】 |
具体的な回答例やフォーマットをプロンプトに含めることで、AIはそれを模範として出力を生成します。
例えば、企業事例のコラムを作成したいなら、以下のように模範となる企業事例を1個〜3個程度与えると良いでしょう
【プロンプト例】 下記の事例の文体、ボリューム、情報要素をもとに、生成AIのセキュリティリスク事例を調査してレポートを作って: 2024年7月に、XXXX電子の社員が誤って社内の機密ソースコードをChatGPTに入力してしまい、外部に情報が流出する事態が発生しました。 |
理想的な回答例を提示することでAIは与えられた例のパターンや癖を読み取り、細やかな条件を与えずとも、一貫した形式やテイストの文章を生成したい場合に役立ちます。
プロンプトにおいて、出力される内容がどのような条件下で生成されるべきか、具体的な要件を明示することも大切です。
以下が、指定すると良い条件の例です。
【プロンプト例】 XXXXの市場調査レポートを以下の条件で作成してください。 #条件 ですます調 表や箇条書きを多用する 国内上場企業のCHRO向け |
上記のように条件を設定することで、AIの回答範囲を効果的に絞り込め、求める結果により近いアウトプットが得られます。ビジネスメールや企業向けのプレゼン資料など、決められた構成や言葉遣いが必要な場合におすすめです。
何をしてほしいかをまとめる「絶対条件」に加え、以下のように出力してほしくない「制約条件」を明記することで、望む結果により近いアウトプットを得られます。
【プロンプト例】 新製品のマーケティング記事を作成してください。 #制約条件 自社他社含め具体的な商品名は使わない だ、でしょうは禁止 |
制約条件によって、出力の一貫性担保や精度向上につながります。ブランドガイドラインや社内ルールに基づいたコンテンツを制作する場合において特に有効です。
ビジネスシーンにおいて、生成AIを活用したテキスト生成は、効率的なコミュニケーションや情報整理、データ管理の面で大きな効果を発揮します。ここでは、ビジネスシーンで汎用的に活用できるテキスト生成用のプロンプト例を紹介します。
ビジネスメールは決まった形式であることが多く、生成AIで作成しやすい分野です。
例えば、会議のアレンジや提案内容の共有、顧客への連絡など、用途に合わせたビジネスメールを生成する際には、以下のようなプロンプトが効果的です。
【プロンプト例】 〇〇社の△△様へ、来週の打ち合わせ日程の再調整を依頼するメールを書いてください。フォーマルな文体で、候補日を3つ提示してください。 |
ビジネスメール用のプロンプトのポイントは、「送信先・メールの目的・文体」を明示することです。頻繁に作成するビジネスメールがあれば、プロンプトをフォーマット化しておくことで、よりスムーズに生成できます。
既存の文章を要約することは、生成AIの得意分野です。数ページにわたる膨大な文書やビジネスレポートでも、迅速かつ正確に要約できます。
例えば、長文のレポートや会議議事録などの内容を要約する場合、以下のようにポイントとなる情報を抜粋し、簡潔にまとめるプロンプトが有効です。
【プロンプト例】 以下の文章を、主要なポイントを含めて要約してください。 |
詳細な要約が欲しい場合は、「〇〇を中心に要約」といったように絞り込みたいキーワードを与えることがポイントです
大量に社内に存在する名刺データの整理は、生成AIに任せることで楽に管理できます。
例えば、名刺画像から会社名や電話番号などの情報を抽出し、テーブルにまとめるプロンプトは以下のとおりです。
【プロンプト例】 以下の手順に従って、画像内の複数の名刺画像を個別に認識してデータを抽出し、テーブル形式で出力してください: 1. 各名刺から以下の情報を抽出: - 氏名 - 会社名 - 役職 - 電話番号 - メールアドレス - 住所 - ウェブサイト(存在する場合) 2. 抽出したデータを以下のようなテーブル形式で出力してください: | 氏名 | 会社名 | 役職 | 電話番号 | メールアドレス | 住所 | ウェブサイト | |--------|----------|--------|--------------|----------------------|--------|------------------| | | | | | | | | 3. データが不明確または読み取れない場合は、該当するセルに「不明」と記入してください。 4. 各名刺のデータ抽出が完了したら、テーブルの下に「データ抽出完了」と記述してください。 5. 画像の品質や名刺のデザインに関する注意点があれば、各行の右端に「備考」列を設置して簡潔にコメントしてください。 それでは、アップロードされた名刺画像の処理を開始してください。 |
名刺画像のデータを取り込むプロンプトのポイントは、情報抽出・データ整形をステップバイステップで実行させることです。
また、読み取り時のエラーで停止することを防ぐためにエラー対応方法を明記すること、出力の形式を具体的に指定することも重要なコツです。
生成AIを業務で活用する際は、セキュリティや法的リスクに十分な配慮が必要です。プロンプトの入力内容は生成物に影響を与えるため、入力段階での注意点を守ることで、著作権トラブルの防止や情報漏えいリスクの低減につながります。
生成AIにプロンプトを入力する際は、セキュリティや法的観点から、企業の機密情報や個人情報、顧客情報など、外部へ漏えいすると問題となる情報は含めないことが基本です。
生成AIの中には、プロンプトを通じて入力されたデータをAIの学習やフィードバックに利用するサービスもあるためです。そのため、生成AIを活用する際は、公開された場での利用を前提とした内容に留めることが基本です。
生成AIが出力するコンテンツには、著作権に関連する問題が潜在している場合もあります。例えば、プロンプト入力時に、既存の著作物を参考にするように指示すると著作権侵害に当たります。
著作権侵害のリスクを避けるためには、引用・参考とする情報やモチーフとして活用する画像については必ず出典を確認し、著作権法を遵守した利用を心がける必要があります。
生成AIにおいて、プロンプトは単なる入力文ではなく、ユーザーの意図を正確に伝え、期待するアウトプットを引き出すための設計図として大きな役割を担っています。
プロンプト作成の基本は、「コンテキストを与える」「具体的な指示を出す」「条件を指定する」の3つです。これらのポイントをしっかりと押さえることで、どのようなアウトプットが求められる場合でも、生成AIは理想に近い結果を提供することが可能となります。